2017年4月の読書と感想

読んだ本の数:23
読んだページ数:5699

高度成長―シリーズ日本近現代史〈8〉 (岩波新書)高度成長―シリーズ日本近現代史〈8〉 (岩波新書)
読了日:04月01日 著者:武田 晴人

 

帝国大学―近代日本のエリート育成装置 (中公新書)帝国大学―近代日本のエリート育成装置 (中公新書)感想
旧制高校制・講座制・学位制度・特別会計制度などの特権的な制度に守られた帝国大学。エリート教育から研究中心への軸足の移動は戦時下に進んで戦後に全面化するのか。/明治38年の東京帝大医科の入学者の平均年齢は25歳。/旧制高校での外国語教育を通じた教養教育。
読了日:04月02日 著者:天野 郁夫


ポスト戦後社会―シリーズ日本近現代史〈9〉 (岩波新書)ポスト戦後社会―シリーズ日本近現代史〈9〉 (岩波新書)感想
70年代~のグローバリゼーションの中で、「「日本史」がもはや不可能になる時代」の現代史。書かれたのが08年なので、3・11以前であり、安倍(第二次)以前・トランプ以前。/第6章に力がこもる。グローバル資本としての「JAPAN」と取り残された「国土」への日本の分裂。新自由主義は前者を選択し後者を切り捨てた。国境を越える人の流れが「日本」という歴史的主体を崩壊させつつある。「帝国」にも「マルチチュード」にも拾われずグローバル化から零れ落ちる多くの人々がどう歴史的主体を可能にしていくのか。「限界社会」のゆくえ。
ー携帯電話・インターネットへの言及はない。
読了日:04月03日 著者:吉見 俊哉


日本の近代とは何であったか――問題史的考察 (岩波新書)日本の近代とは何であったか――問題史的考察 (岩波新書)感想
19世紀イギリスのバジョットの「近代」考察を導き手としつつ、「日本の近代」を考察する。バジョットは「議論による統治」の伝統を「近代」概念の中核におく。東アジアには「議論による統治」の伝統はなかった。それをはじめて創出した日本の近代の意味を問う。/語りかけ口調でわかりやすい。/近現代を見通す視座としてまとまっている。もう少し丁寧に読み込みたい。
ー「東亜新秩序」やアメリカのアジア冷戦戦略は民族主義帝国主義を否定するかたちの「地域主義」だが、それは垂直的コミュニケーションによった。若い世代の共通の歌など水平的コミュニケーションに基づく日中韓の交流は「アジア文化」が史上初めて実質を持ちつつあることの徴候か。とある。歴史認識問題と併置されるが、この2つは少し次元を別にしているのではないかと感じた。
ー幕末の慶喜政権の近代化路線にはじまる「富国」と「強兵」は、敗戦により「強兵」なき「富国」となった。その「富国」路線は3・11で根本的な疑問を突きつけられた。/今後必要なのは、一国近代化路線ではなく、グローバルな規模で近代化路線を再構築すること。とある。志向としてはやはり近代化のやりなおしなのだろうか?
読了日:04月05日 著者:三谷 太一郎


知的生産の技術 (岩波新書)知的生産の技術 (岩波新書)感想
改めて、evernoteちゃんと活用していこう、と思った
読了日:04月09日 著者:梅棹 忠夫


文科系必修研究生活術 (ちくま学芸文庫)文科系必修研究生活術 (ちくま学芸文庫)
読了日:04月10日 著者:東郷 雄二

 


「文系学部廃止」の衝撃 (集英社新書)「文系学部廃止」の衝撃 (集英社新書)感想
期待よりも随分面白かった。ナメクジウオやら宮本武蔵やらでの比喩は広い読者を意識してのものか、わかりやすい。「文系」が「役に立つ」ことに異論は無論ないのだが、理系的知が目的遂行的で価値創造できないのだと強調されすぎているのには少し疑問も。従来の物の見方を根底から捉え直すのは、特に技術発展が著しい現在、実は「理系」出身なんじゃないかとも思う。/ 「人生で三回、大学に入る」そんな時代が来たら良い。素晴らしい未来図だとは思う。/やはり金銭がちゃんと回る仕組みが大事だよな、と改めて感じた。
読了日:04月12日 著者:吉見 俊哉


勉強の哲学 来たるべきバカのために勉強の哲学 来たるべきバカのために感想
とても刺激的。そして実践的。ツッコミ=アイロニー=深める・ボケ=ユーモア=転々とする・絶対は目指さずに中断するが比較は続ける・中断の根拠は主観的(享楽的)に、というあたりなどすぐにでも役に立ちそう。/享楽的こだわりを変えること=「出来事と出会い直」すことが精神分析によるのではなく自己探究=勉強でできるのか、もう少し突っ込んで聞きたいと思うが、こだわりを変えることそれ自体の必要性はあまりないということかもしれない。
ー変わる可能性があるということが大事なのだろう。簡単に変えられてしまったら身体がある意味がなくなっていく。
読了日:04月14日 著者:千葉 雅也


LGBTを読みとく: クィア・スタディーズ入門 (ちくま新書1242)LGBTを読みとく: クィア・スタディーズ入門 (ちくま新書1242)感想
とても読みやすいです。クィア・スタディーズについてすいすい知らない知識を知っていける。5章・6章での3つの視座と5つの基本概念が特に「使える」。巻末の「読書案内」の文献が充実していてかつ最新なのもいいです。/「良心よりも知識」というのはとてもとても大事だ。
読了日:04月16日 著者:森山 至貴


同性愛と異性愛 (岩波新書)同性愛と異性愛 (岩波新書)感想
流し読み。宇多田ヒカルの「二時間だけのバカンス」のクローゼットってここの関連のものだったのか。意味を知らなくてもドキッとしていたフレーズだったが、知ると余計に印象的だなぁ。
読了日:04月16日 著者:風間 孝,河口 和也


ソーシャル時代のハイブリッド読書術ソーシャル時代のハイブリッド読書術感想
さくっと流し読み。千葉雅也『勉強の哲学』からなので、本当は『ハイブリッド発想術』のほうが読みたいが手に入りにくいのでとりあえずこちら。「新刊.net」と「ブクペ」は全く知らなかった。/それ以外はさほど知らない情報もない。けれど、読書術をまとめたものとしては分かりやすさも目配りの良さもよい。とても良本だと思うので、身近に読書について悩んでいる人がいたら貸してあげたい(まぁそうそういないのだが)
ーコメントを見て、図書館を使うことに言及なかったことに気づいた。さすがにぼんやり読みすぎているかもしれない。/読書の本質が「ひとりで読む」であるというのは、現代人からしたら当たり前な感じだが、しっかりそこを指摘しているのは読書術本としてはやはりすごいのではないかと思う。「ソーシャルリーディング」の今後は非常に気になる。
読了日:04月18日 著者:倉下 忠憲


職業としての学問 (岩波文庫)職業としての学問 (岩波文庫)感想
読み飛ばし気味。また読み返す。講師・教授の昇進は「僥倖」にすぎないというのは、まぁそんなもんだよね。という感じ。これは(も?)比較的どの社会でも通用しそうな話/後半は読み切れていない感じがする。世界観や政治的主張を教壇で掲げないこと、そして「日々の仕事に帰れ」。それを強調する旧訳序が1936年というのが、ぎょっとしてしまうところ。
読了日:04月19日 著者:マックス ウェーバー


大学とは何か (岩波新書)大学とは何か (岩波新書)感想
『「文系学部廃止」の衝撃』の原理編。中世ヨーロッパの大学から、国民国家成立期の新しいドイツ型大学、アメリカの大学院の発明、日本の帝国大学、と大学の来歴と多様さをたどる。/ 大学とはメディアである。人と人、人と知識の出会いを媒介する。/ 近代以前の日本(アジア)の状況に関してはもっと掘り下げられてもよいのではないかと思う。私学の伝統は洋学塾に軽く目を遣るだけでいいのかな。/ 学生運動や論壇なども大学を論じていく中で語れるのだということ(当たり前?)がよくわかり興味深い。
ーレディングズの「不同意の共同体」としての大学というのが気になる。そこで浮上するリベラルな知とは「一般化した学際空間ではなく、学問上の結合と離反が繰り返す、一種のリズム」。千葉さんの本で言う「ダンス」なんかと響き合いそうな印象(何かしらの系譜関係があるかもしれないが)
森有礼福沢諭吉南原繁・永井道雄などの制度設計者への関心も高まるが、設計者だけ見ていてわかるものではないし、「メディア」として大学をみるのであれば、違うアプローチが必要なのだろうと感じる。
読了日:04月19日 著者:吉見 俊哉


アウトライナー実践入門 ~「書く・考える・生活する」創造的アウトライン・プロセッシングの技術~アウトライナー実践入門 ~「書く・考える・生活する」創造的アウトライン・プロセッシングの技術~感想
WorkFlowyは友達から薦められていたが、やっと使う気になった。/2つのインタビューから、利用している人の空気感が分かって、刺激的。/単に実用じゃなくて思想的にとらえている、というか、ソフトがどのように発想を規定するのか、などまで語ってくれているのでとてもとっつきやすく感じた。/FreeMindを僕は全く知らなかったです。マインドマップも気になる。
ー他人の書いた文章をアウトライナーで読む。というのは発想になかったので、驚いた。実践してみたけれど、これは相当面白い。。。
読了日:04月19日 著者:Tak.


蘭学事始 (岩波文庫 青 20-1)蘭学事始 (岩波文庫 青 20-1)感想
読み物として非常に面白かった。/玄白が自身の『解体新書』への情熱を語るくだりが熱い。他のメンバーとの違いを強調していて、自負心に満ちている。/仏典翻訳を先例として意識しているところや、「どのように出版したら世の人に読んでもらえるか」を練って行動しているところ(報帖同様=広告として図と解説だけのものを『解体新書』に先立って出版してる)などが興味深い。
読了日:04月19日 著者:杉田 玄白,緒方 富雄


宇多田ヒカル論 世界の無限と交わる歌宇多田ヒカル論 世界の無限と交わる歌感想
今ひとつ素直に読めない。ざらつきをかなり感じて、熟読は全くできずに、つい斜め読み気味になってしまった。根っこのところでの歌詞への感覚や大筋の物語はなんとなく共感できる気もするけれど、それを説明する言葉を身体が受け付けかねる。しかし、既に自分が(他の人の言葉を補助線にせず)じっくり読んだことがある詩(詩集?)に対する批評というのは実は初めて読んだ気がするのでこんなものなのかもしれない。/まぁ宇多田ヒカルについては、それについて語る言葉よりも、彼女自身の言葉を読みたいよね、ということに尽きる。
ーCOLORSの前後が杉田さんにとっては重要な感じだが、まさに自分にとってもそうなので、解釈などについて、素直に「うんうん」とか思えないのは仕方ないな。
ー杉田さん自身に関心が湧いたらまた読むだろうと思う。
読了日:04月20日 著者:杉田 俊介


贖罪のヨーロッパ - 中世修道院の祈りと書物 (中公新書)贖罪のヨーロッパ - 中世修道院の祈りと書物 (中公新書)感想
書物」に惹かれて。なぜか翻訳調な感じで、あまり読みやすい感じではない。フランク王国は昔好きだったのだが、やはり未だに、「ブルンヒルデ」とか「キルデベルト」とかの名前には響きだけでわくわくしてしまう。「書物」について話題が集中するのは中ほどの数章だけで基本的には修道院の歴史をたどったもの。
ー日本の古代の寺院建設を思わされるような、支配層と修道院の関係性が非常に興味深かった。/最近よく読んでいる本のテーマとの関連で言えば、「大学」成立以前のヨーロッパの知的環境についての本ともいえる。
読了日:04月22日 著者:佐藤 彰一


日本の近現代史をどう見るか〈シリーズ 日本近現代史 10〉 (岩波新書)日本の近現代史をどう見るか〈シリーズ 日本近現代史 10〉 (岩波新書)
読了日:04月24日 著者:

 


中世の知識人―アベラールからエラスムスへ (1977年) (岩波新書)中世の知識人―アベラールからエラスムスへ (1977年) (岩波新書)感想
アナール学派歴史学者による中世西ヨーロッパ(12c~15c)の知識人・大学・ユマニスト(人文主義者)史。都市の職人としての知識人から貴族的なユマニストへ。。。印刷術の発明以前のユマニストは「学問と教育の密接な関係」をかえりみなくなっていった(=孤高、後退)というところで叙述はおわる。 / ゴリアルド族なる放浪学生団やアベラールの恋には心惹かれるものがある。 / 修道院側からされる批判の描写には今でいう「反知性主義」的なものを感じた。
ー特に思想史的な知識が追いついておらず、そのあたりはなんとか読み通しただけというのが正直なところ。訳が少し変なんじゃないのかと思う文(意味が取れなかった文)が幾箇所かあったが、さほどこだわらずに読みすぎてしまった。
ー大学における「討論」の登場の強調には、おお江戸と一緒じゃないか!なんて思ったりもしたが、むしろこの流れの研究からの影響で日本史でも同じ事が言われているだけかもしれない。
読了日:04月26日 著者:ジャックル・ゴフ


神田孝平―研究と史料 (1973年) (経済史研究会叢刊〈第7冊〉)神田孝平―研究と史料 (1973年) (経済史研究会叢刊〈第7冊〉)感想
神田孝平は簡単にいえば福沢諭吉の友人の学者で明治政府の官僚・議員になった人、という感じ。/本庄栄治郎による「研究」部と、「伝記」「略伝」のみ読了。とりあえず。神田孝平本人の論稿は未読。/美濃の人だったのか。漢学・蘭学・数学・経済学まではいいとして晩年に考古学へ入っていくのは不思議な流れだ。
ーあまり研究されていないみたいだが、たしかに伝記を読んでも微妙な魅力の乏しさが否めない。経済学の輸入には重要な役割を果たしたということのようだが。
読了日:04月27日 著者:


新訂 福翁自伝 (岩波文庫)新訂 福翁自伝 (岩波文庫)感想
読ませる自伝。面白い。/ とても軽妙。自分の過去の行動への分析をがっつりしていつつも、それに縛られないあたりは知性だなぁと思う。 意外と古い堅さもある人物だったんだなということと、「堅い」などと言われることへ相当抵抗があったんだなということがよく分かる。 余裕な姿勢が素晴らしいが、それを示されれば示されるほど、環境に恵まれていたんだなぁと感じてしまうところも
ー中津には馴染めない。大坂こそ故郷。みたいな筆致。有名なんだろうけど、知らなかった。/塾生の暴れ方はなんかさすがに嫌だねえ笑。「えた」に例える部分なんかもでてきて、塾生身分の「社会外」感がよくわかるけれど。/授業料をはじめたのが福沢とは知らかなかった。本当かな。もう少し前のことかと思っていたのだが。これ以前の塾ってのは本当に「家族同然」だったんだろうな。/「宿昔青雲の志」に批判的に言及がある。いつからの風潮なのだろう。
ー遺言の風習について「西洋人が習慣に迷うて馬鹿をしているのだ」という。/朝鮮人への言及の仕方や、日清戦争に喜んでいるあたりに、今からすれば違和感が持たれるだろう。/「独立」への志向とそれに基づいた行動にはさすがだなぁと単純に感心する。/自分のかつての行動を「チャンと~~している」みたいな感じで書いている。これに代表される全体的な文体が、とても居心地が悪く嫌な感じ。この全面的な肯定感。好かない。が、この文体で語る年配の方って今も少なくない。時代の変化だろうか。
読了日:04月28日 著者:福沢 諭吉


日本近代史学事始め―一歴史家の回想 (岩波新書)日本近代史学事始め―一歴史家の回想 (岩波新書)感想
歴史学者の自伝でこんなに面白いものもあるんだなぁ。/大久保利通の孫ということで、大学あたりまでの記述は上流社会。キラキラしていてときめいてしまう。ただ本人は華族が廃止になって「解放された」と書いている。華族出身者が日本近代史学史の初期の重要人物とは非常に面白いことだ。/東大国史学科の雰囲気もうかがえる。一方明治文化研究会の重要性が何度も強調されている。/最初の論文が古事記で東大での卒業論文武田信玄とは。。。近代史へ踏み出すのが28歳、初めて定職を得るのが49歳。。!
読了日:04月30日 著者:大久保 利謙


読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫)読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫)感想
この本をじっくり読んでいること自体の居心地が非常によろしくなく、とてもとても面白いのにちょくちょく飛ばし読み・流し読みをしたくなる本。/ 創作を目的として読書をするのであれば、本は読まないほうがいい、というのも十分うなずける。/ 翻訳はわりに読みやすかった。が、訳者あとがきで訳者がこの本にのっとった翻訳論を述べるので、心配になってきて原書が読みたくなる笑。(しかし、この種の心配は翻訳書を読むときは常に抱くべきなのだろうな)
ー「精読」するということの意味、本が物質的に固定されているということの意義を考えたくなる。これは歴史研究について考えることにも通じるのだろう。あるいは、批評と研究の距離というか。/結びにおいて、書物の「脱神聖化」と学生が「自分の本を書く権利」を持っているのだと思うことの関連が言及されているが、これは非常に読書・書物文化を考える上で重要なポイントだと思う。
ー最近は、読書している最中に、「読書メーターでどうやってコメントしようか」ということを考えてしまっていることがあるが、これはこれで一つの読書術なわけだ。(読書メーター的な場がなくなったら今自分がしている類の「読書」はできなくなるかもしれない。)・・・p177「本について語ること、ないし書くことと、本を読むことの違いは、前者には、顕在的であれ潜在的であれ、第三者が介在するということである。」第三者の介在しない読書(そんなもの理念的にしか存在しないだろうが)には創造性があまりにもないよね。
読了日:04月30日 著者:ピエール バイヤール