diary

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自分用メモ・ノート

2017年9月の読書と感想

1990年代論 (河出ブックス)1990年代論 (河出ブックス)感想


東・速水・大澤の共同討議と、宮台・田原へのインタビュー、そして70年代80年代生まれの論者による各ジャンルの90年代論。/90年代初頭生まれとしては、リアルタイムで経験していない部分が多く、ほとんど「後追い経験」でしか知らない。/自伝的なエッセイも多く、面白く読めるけれど自分の中に参照点がないからか今ひとつ響かなかった。90年代的なものがまだまだ残存しているというのはよくわかりはする。
読了日:09月04日 著者:大澤聡


異類婚姻譚異類婚姻譚感想


なんとなく狐が出てくるものだと思いこんでいた。少し違った。結婚したくなくなるような、それでもしたくもなるような。蛇ボールのイメージが鮮烈。こんなに寓話的な話を書く作家だったっけ。これまでも嫌いじゃなかったが、この方向でいくのならわりと好きな作家になるかもしれないなぁと思った。以前よりも、登場人物が社会に馴染んでいるというか諦めて溶け込んでいる感がある。/「犬たち」が好き。湖のシーンが美しい。
読了日:09月05日 著者:本谷 有希子


私の恋人私の恋人感想

強烈な恋愛小説だった。漂う『サピエンス全史』感(翻訳でるより前だけど)。表紙はちょっとイメージ喚起力強すぎるんじゃないかと思った。あるいは恋人というのはこの天使だとでもいうのか。一読では、全然読めていない気がする。
読了日:09月06日 著者:上田 岳弘


1980年代 (河出ブックス)1980年代 (河出ブックス)感想


80年代。生まれていない。両親が大学生くらいか。鼎談がどれも面白い。特に平野啓一郎の発言がとても興味深かった。山口昌男中村雄二郎の流れにのるのか。/高橋源一郎の批評論とくに吉本隆明論が面白い。80年代で切ることの意義はこの高橋さんの論が一番了解しやすい。/他の論考は流し読み気味。徳永さんの演劇とテレビの接続に関する話は単純に知らないことが多いので面白く読んだ。
読了日:09月06日 著者: 


日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか (講談社現代新書)日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか (講談社現代新書)感想


かつて日本人はキツネにだまされていた。その「現象」が起らなくなったのは1965年ころらしい。というキャッチーな話から日本の近代化について、歴史とは何かについて、考える本。キツネにだまされていた、というような「みえない歴史」=現在の知性ではつかめない歴史=身体性や生命性と結びついていた歴史を私たちはいかにつかむか。/65年という具体的な数字やキツネほか村人たちの話などは非常に興味深いし、天台思想からファイヤアーベントまで視野も広い。が、明瞭な結論があるのでもなく、目新しさはさほどないかもしれない。

民俗学への明確な言及がほとんどないのは、前提になっているからなのか、そういうわけでもないのか。/日本人論に対するあやうさの表明なんかも途中にある。

「悟りとは自己解体に美をみいだすこと」
読了日:09月07日 著者:内山 節


プレーンソング (中公文庫)プレーンソング (中公文庫)感想

初保坂小説。えっ、って思うくらいに現代風俗版の吉田健一だった。「て、」で文を繋いでいくのとか、◯◯らしさにこだわるところだとか。感想も似ていて、読んでいる時間が幸せなので、いつまでも読んでいたい。


ちょっと検索してみたら、やっぱり吉田健一の『東京の昔』の影響があるとのこと。
読了日:09月07日 著者:保坂 和志


地の底の記憶地の底の記憶感想

文藝で「死者たち」を読んで面白かったので。現実の歴史に絡めつつ実在しない土地とその話を展開していくというそのやり方がとても好き。ぐいぐい読ませる割に、読み終わってからあまり残るものがなくて不思議なのは「死者たち」と同じか。
読了日:09月08日 著者:畠山 丑雄


断片的なものの社会学断片的なものの社会学感想

ちょっと文体が肌に合わない。描かれるエピソードには惹かれる。千葉さんが帯で書いているけど、僕も「ズルさ」を感じた。好きになれない。面白い人なんだろうなと思う。/「私のなかに時間が流れる、ということは、私が何かの感覚を感じ続ける、ということである」なんてことを言うのに、決して達観には行かずに世俗に寄り添い続けるのが、良い。
読了日:09月09日 著者:岸 政彦


分断社会・日本――なぜ私たちは引き裂かれるのか (岩波ブックレット)分断社会・日本――なぜ私たちは引き裂かれるのか (岩波ブックレット)感想

編者による論を中心に読む。/日本社会は分断されている。その原型は明治時代の生まれた新しい分断の形である。自己責任論的な通俗道徳が社会を支配したことで、経済的失敗者が断罪され切り捨てられる「獣の世」(出口なお)が生まれた。バブルが崩壊し、失敗者が増えることで現代にも「獣の世」が再来している。/もろもろの「再定義」を意識的におこなって想像力をとりもどせ、社会に引かれる分断線をときほぐして共通の関心の所在を考えよう。「分断の政治」から「共通の政治」へ。

最初に出されている原風景としての明治という指摘が生かされているようには感じない。
読了日:09月12日 著者: 


カブールの園カブールの園感想


宮内さんはこういうものも書くのか。表題作、時間を置いてまた読みたい。/「わたしたちの世代の最良の精神」「伝承できないものを伝承する」「日系人ではなく、日本人の目になっている」
読了日:09月12日 著者:宮内 悠介


哲学しててもいいですか?: 文系学部不要論へのささやかな反論哲学しててもいいですか?: 文系学部不要論へのささやかな反論感想

哲学は役に立つ。市民としての器量を育てる。不確定で予測困難な中でも思考できる(=「箱の外で思考」できる)人、相互理解の不可能性や「わからなさ」を前にしても逃げず冷静に見据える覚悟をもった人を育てる。/これほど重要さが明確なものなんて他にないじゃないかと思ってしまう。どうか多くの人へ届いて欲しい。/5章末p190~あたりが肝。「哲学の器量」をもった市民が社会で積極的な役割を果すためには「外の思考を箱の中に持ち込む勇気」=「哲学する勇気を、個人の孤独な決断の問題にしてはならない」。
読了日:09月13日 著者:三谷 尚澄


哲学がはじまるとき―思考は何/どこに向かうのか (ちくま新書)哲学がはじまるとき―思考は何/どこに向かうのか (ちくま新書)感想
高校入試で冒頭部が出題されていた関係で読む。/「哲学という営みは、その在り方からして「入門書」なるものの存在を許容しない。…哲学にはそのような統一的な全体などなく、あるのは個々の哲学のみなのだ。」ということで、筆者自身の一個の思考(=哲学)を展開する。/文章は丁寧でとてもわかりやすい。思考・哲学について考える第一部はかなり読みやすく刺激的だった。がっつり世界を問い始める第二部は立ち止まりつつ読まないとついていけない。

冒頭部はほんとうにわかりやすく、出題されていたのもなるほどと思える。/第二部、「場所」という言葉のイメージが少し掴めた感じがある。
読了日:09月14日 著者:斎藤 慶典


ジニのパズルジニのパズル感想

良いタイトル。国をまたいでまたいでまたいで、でもひたすらに学校の話でもある。/「空を受け入れる」という言葉がまだ咀嚼しきれない。
読了日:09月15日 著者:崔 実


漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ感想

なんだかんだで入門し損ねてきた漢詩。これは読みやすい。『詩経』から項羽やら王昭君やら曹操やらを経て陶淵明まで。唐詩以前。/左思が、自分の娘たちを描いた詩(「嬌女詩」)が印象的。建安文学にも興味。にしても妻や家族と引き離される話が多い。
読了日:09月15日 著者:江原 正士,宇野 直人


戦う姫、働く少女 (POSSE叢書)戦う姫、働く少女 (POSSE叢書)感想

ポピュラーカルチャーにおける女性表象を論じる本。ポストフェミニズム状況における女性の分断の有様と連帯の可能性を語る。/文化と労働の分離=承認と再分配のジレンマというナンシー・フレイザーの指摘した問題が根底にある。/鑑賞したことのある作品(特に子供の頃に観たものなど)が読み解かれると、そんな読み方があるのか!という興奮が味わえて楽しい。『魔女の宅急便』にそんなにわかりやすく「やりがい搾取」が描かれているとは思いもしなかった。『ハリー・ポッター』を多文化主義で読むというのも。

「連帯とは他者の願望を自分の願望として受けとめることである」
読了日:09月18日 著者:河野 真太郎


発表会文化論: アマチュアの表現活動を問う (青弓社ライブラリー)発表会文化論: アマチュアの表現活動を問う (青弓社ライブラリー)感想

ライブハウスから家元・習い事、公共ホールと劇場法、軽音やブラバンなどの部活動、合唱、公募展など、、、。日本の発表会文化を考えていく。/お金を払ってまで人に見てもらうというのはどういうことなのか。/具体的な事例の検討がなされているがどれも興味深い。サイタやらデザフェスやら学会報告(!笑)までもが視野に入っていて驚く。総論的に社会を論じるところまですすめば相当面白いのではないかと思う。

宮入さんの、4章での軽音楽部の健全な部活動化というのは興味深かった。/5章、氏原さんの論考での「芸術」と「文化」を対置しての公共ホール論は刺激的だが踏み込みに欠ける。でも公共ホールの利用については「発表会文化」から考える必要があるというのはそうなんだろうなとは関わりが浅めの僕も思う。
読了日:09月18日 著者:宮入 恭平


群島と大学: 冷戦ガラパゴスを超えて群島と大学: 冷戦ガラパゴスを超えて
読了日:09月18日 著者:石原 俊
青いムーブメント―まったく新しい80年代史青いムーブメント―まったく新しい80年代史感想


WEB版「人民の敵」でゲンロンの「現代日本の批評」へのコメントが公開されているが、それが面白かったので。この本は90年までの外山さん自身とその周辺の運動史。「管理教育」への反発から高校生・高校中退者らが全国規模でおこしていたムーブメントの記録。/高校時代に一人でブルーハーツ尾崎豊にどはまりしていた身として、非常に親近感が湧いた。この時期まだ僕は生まれてもいないが。

若者文化における「青臭さ」の系譜ってサブカル史?とかポップカルチャー史?で全然語られないの以前から随分不満なのだが(オタクとヤンキーしかいないとでもいうのか)、その点この本は本当に面白いと思った。あと、自分が意外と運動気質なのかもしれないなぁとも。/6・70年代とは少しずれて高校でも運動が盛んだった時期があって、うちの学校でも暴れていたやつがいた、という話を母校で聞いたことがあったのだが、この「80年代」のことだったんだろうか。

「80年代」ムーブメントにおいて「たけし軍団」も重要みたいなことが書いてあるが、具体的に言及がなく、気になる。また外山さんのファシストへの転向についても読めるのかと期待したのだが、そこまで話が進まなかった。他の本も読もう。/尾崎豊ブルーハーツエレファントカシマシのデビューが大体同じ時代でみんな同世代だってこと、よく考えたらわかるんだけど、思ったこともなく、かなり衝撃を受けている。
読了日:09月23日 著者:外山 恒一


文体の科学文体の科学感想

タイトルで前から気になっていたので。/文体の物質的要素云々ということを掲げる割には、カバーする範囲が結局ほとんど本を超えないあたりとか、所々に不徹底を感じる。/色んな話題が提供されるので読んでいて飽きないけれど、多くは紹介以上の深さはないかもしれないなと思う。が、巻末の参考文献が丁寧であり、興味を持ったら遡れることを考えれば、総じて良い。/法律の文体を考える五章は、他で触れたことのない議論でとても面白かった。

ほかに、学術雑誌の文体についてや、植物の分類の仕方について、聖書の批評についてなど興味深い話題多々。
読了日:09月24日 著者:山本 貴光


必読書150必読書150感想

渡部直己と大澤聡の対談から。大澤さんはこれを読みつつ紹介されてる150を全部よんだらしい。正気かよ。。。そのエピソードとこの本を10代くらいで知りたかったわ。/とりあえず、序文と座談だけ読む。このメンバーがみんな大学関係者というのも不思議な話。/免疫形成のため、ヤバイ本には一回感染しておけ、というものすごい姿勢で編まれているらしい。。。/後半、岡崎乾二郎渡部直己らの創作教育論が出ていてとても面白い。
読了日:09月25日 著者:柄谷 行人,岡崎 乾二郎,島田 雅彦,渡部 直己,浅田 彰,奥泉 光,スガ 秀実


漢詩―美の在りか (岩波新書)漢詩―美の在りか (岩波新書)感想

良著。類書とは比較にならないほど良い。漢詩の美を構造やリズムから分析する。「作者=だれが」「主題=何を」「様式=いかに」の三要素と「詩跡」「文語自由詩としての訓読漢詩」の5ポイント。/浴びるほど漢詩に触れることができるのならばともかく、そんな環境にはいられない身としては、理論的に魅力を分析していくのが、漢詩を理解し楽しむための最短ルート。それを示してくれている。/最終章。日本での漢詩は訓読で楽しまれていたが、それは文語定型詩(短歌・俳句)に対応する文語自由詩としてあったのだ、という指摘。

李白の解説なんかを読んでいると、酒を楽しめるようになりたいなぁと思う。また、陶淵明白居易の詩の境地(”真””適”)について聞いていると、どうしても吉田健一を思い浮かべてしまうところがある。/三章は詩型について。絶句と律詩、五言と七言の美的な特性を明快に解説したうえで、短歌・俳句とも比較している。/押韻・平仄についてはほぼ出てこないが、鑑賞の際にはあまり重要ではないということか。少なくとも日本語で漢詩を楽しむ際の主要な「美の在りか」ではないという判断なのだろうと感じた。

最終章は、とても面白い。「自由詩」(訓読漢詩)と「定型詩」(短歌)が長期間にわたって大量に併存してきた事例は世界文学史の中でも稀。日本語定型詩には「対句」表現が乏しいため、「対句」表現への願望は漢詩によって充たされてきた。日本漢詩の名作には訓読してリズムが整わない作品はほとんど無く、また中国での名作も訓読のリズムが悪いものは日本では好まれない。
読了日:09月26日 著者:松浦 友久


生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)感想

高校受験に出されていたので、今更ながら。ロザリンドの話などは聞かされたことがあったけど、この本が元ネタだったのか。/過去の科学者たちが生き生きと描かれていて良い。科学的な説明も、理解したつもりになれる感じにわかりやすくて面白い。売れたのも納得。ちょくちょくはさまれる景色の描写とか妙に感傷的な文体がちょっと好きじゃない。/出題はエピローグからだったが、たしかのここの引きが一番強い。

ケヤキの樹には、二本として同一の形はない。・・・しかし、私たちは、ケヤキはどれを見てもケヤキの姿をしているがゆえに、一本のケヤキのあり方の一回性を、しばしばある種の再現性と誤認しがちなのだ。しかしそこには個別の時間が折りたたまれている。」p269 アイドルを思い浮かべちゃいましたね。
読了日:09月27日 著者:福岡 伸一


日本語の文法を考える (岩波新書 黄版 53)日本語の文法を考える (岩波新書 黄版 53)感想
国語の文法についてあまりに知らないので、とりあえず。78年の著作。新書らしからぬ重厚さ。既知と未知・ウチとソト・判断の様式、などなどから日本語文法について考える。英語とは全然違う(主語・過去と未来などから考えるのではない)のだと。/興味深いが、どれくらいの信頼度なのか、今でもなお有効なのか、判断する材料が自分に全くなくて困る。日本人は全体として農民であり…みたいな、時代的に仕方ないとはいえ明らかに間違っている部分もあるが、論旨に影響があるようには思えない。

奈良~平安に漢語が入ってきたことによって日本語は文法上大きな変化を蒙っている(抽象名詞のあり方や形容詞の活用・形容動詞の発達など)というのは気になる指摘。/また、日本語の動詞は自動詞・他動詞の区別が明確でなく、かわりに(?)動作については自然と作為の弁別がある、未来形はなく主体的な想定や推量があるだけ、過去形もなく記憶を示すキ・ケリがあるだけ、など時間論だったり主体に関してだったりにも展開できそうな話題が多い。
読了日:09月27日 著者:大野 晋


ベーシック・インカム - 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書)ベーシック・インカム - 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書)
読了日:09月27日 著者:原田 泰

 


カラフル (文春文庫)カラフル (文春文庫)感想
こどものころの世界の見え方とか考え方とかをすこしだけど思い出した。どことなく演劇的というか、台詞まわしが秀逸。ひろかとのやりとりが、よかった。/でも、彼を救うのは、かつては彼には認識もされないまま一方的に見つめていた少女だ、というのがやっぱりとても美しいところだ。
読了日:09月27日 著者:森 絵都


都市と野生の思考 (インターナショナル新書)都市と野生の思考 (インターナショナル新書)感想
流し読み。面白い部分が多々あるものの、軽快に話題が転じていくし、仲が良い二人のハイコンテクストな会話でもあるので、ちゃんと受け止めるのがなかなか難しい。とりあえず、大学論や都市論は専門家というより当事者の声として面白い。/しかし、社会実験を引き受けているような大学生って大学の外で活動している気もする。
読了日:09月28日 著者:鷲田 清一,山極 寿一