diary

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自分用メモ・ノート

2017年10月の読書と感想

マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ〈この宇宙〉にいるのか (星海社新書)マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ〈この宇宙〉にいるのか (星海社新書)感想

最新の宇宙論のわかりやすい解説。わかりやすいといっても僕には理論的な部分はわからないが。。。クオーク超弦理論も出てきて難しい。宇宙のイメージだけは掴めたかな。/宇宙を一つだと考えるほうが「革命的」で、マルチバースを考える方がむしろ保守的だ、というのは納得。

議論の妥当性など僕には全然分からないが、科学的な考察を進めた先でこんな世界観が生まれてくるというのは面白いことだ。/結局数ある宇宙が生まれる中で〈この宇宙〉が成立しうる条件も当然にいつか生まれてくるのであって、そこには奇跡もなにもないのだと、こう言ってしまえばとても凡庸なものにもなる。
読了日:10月01日 著者:野村 泰紀


良いテロリストのための教科書良いテロリストのための教科書感想

右翼に語る左翼史。教育についてなどだけ過激だが、ほとんどひたすらに穏健な印象。語り形式なので読みやすいし、左翼の運動史を外山史観?でまとめていて良い(年代論は出てこないな)。/60年代末新左翼の「ノンセクト・ラジカル」の姿勢を貫きつつ(それはまた歴史性にも自覚的であることでもありつつ)PC的方向は断固拒否反発、が外山さんの姿勢。

個人的には本当にどうでもいいことだが、架空の聞き手の相槌や質問のノリや、写真のファッションセンスとかには、前代の面白活動家(人気者)的な限界を感じざるを得ない(むしろ元々そうなのか)。/管理教育への反感には非常に共感。ちょっとだけ出てきた学校教育論は面白い。
読了日:10月01日 著者:外山恒一


刀語 第一話 絶刀・鉋 (講談社BOX)刀語 第一話 絶刀・鉋 (講談社BOX)
読了日:10月01日 著者:西尾 維新

 


西尾維新対談集 本題西尾維新対談集 本題感想

「本題」だけの対談集。何に対してなのかよくわからないまま何故か非常に羨ましくなっていてもたってもいられなくなりそう。創作に生きるということに伴う緊張感。/羽海野・辻村とは仲が良いようで、他の三人とは空気感が随分違う。小林賢太郎の創作・発表環境の話や堀江敏幸西尾維新論などとても中身が濃い対談。

荒川弘との対談での「最終回」の話題が面白い。〈最終界〉読みたい。/他には、荒川弘対談でのキャラにあいさつをさせる・名前を呼ばせる話、羽海野チカ対談での「才能」の話、辻村深月対談での今は「余生」だという話。ちょくちょく出てきていた自作への愛着だとか、「小説家」へのわだかまり、だとかの話も興味深い。/堀江さんの「配分しない」こと=「空っぽになるまで書く」ことという創作論もまた。
読了日:10月02日 著者:西尾 維新,木村 俊介,荒川 弘,羽海野 チカ,小林 賢太郎,辻村 深月,堀江 敏幸


いのちの女たちへ―とり乱しウーマン・リブ論 (河出文庫―ウイメンズコレクション)いのちの女たちへ―とり乱しウーマン・リブ論 (河出文庫―ウイメンズコレクション)感想

70年代に書かれたもの、まだまだ効力があると思う。読みやすい文体ではないけれど、もっと読まれてもいいのでは。勿論女である著者自身についてなんだが、男へも言及が多く、むしろ男へのことばとして読んだ。/〈女から女たちへ〉〈男から男たちへ〉/「階級社会とは、〈誰にも出会えない体制〉だ」/「〈痛み〉を〈痛い〉と感じる」こと。それができない男たちと女たち/非日常へ逃げずに日常を。「非日常はごまかせても日常はごまかせない。日常をごまかせないとは、とり乱しをごまかせないこと」

解説は伊藤比呂美
読了日:10月03日 著者:田中 美津


天文学者たちの江戸時代: 暦・宇宙観の大転換 (ちくま新書)天文学者たちの江戸時代: 暦・宇宙観の大転換 (ちくま新書)感想

科学史の専門家いわく、江戸天文学への入門書としては最も良い、とのこと。各時代、一人の学者にスポットライトをあてつつ江戸の幕府周辺での天文学を概観。天文的な知識がなくともすいすい読める。/渋川春海徳川吉宗麻田剛立高橋至時間重富高橋景保…。/当時最先端の学者たちの軌跡ということで、とても科学史っぽい。世間との関わりはあまり出てこないが、政治とは強く関わっている。商人出の伊能忠敬間重富がどういう形で天文に興味を持つに至ったのかが気になるところ。

麻田剛立周辺のネットワークが興味深い。九州から大坂に出てきて、のち寛政期にその門下らが幕府へ取り立てられる。同時期の正学派朱子学と軌を一にしている。当然交流もあって本書にも頼春水との交遊が出てくる。/高橋至時間重富の手紙のやりとりがとても面白そうなので読んでみたい。『星学手簡』。/高橋至時の孫にあたる渋川敬直(渋川景佑の子)も気になる。英文法の解説書の翻訳だとか、水野忠邦からの重用だとか。
読了日:10月06日 著者:嘉数 次人


職業としての地下アイドル (朝日新書)職業としての地下アイドル (朝日新書)感想

すごい本。優しい。プロローグ・エピローグの自分語りだけでも読む価値ある気がする。/地下アイドルは親に愛されて育ったが、学校でいじめにあって、人に愛される喜びを喪失した女の子、が多いのでは、という数字に裏付けられた推測。わかる気がする。
読了日:10月06日 著者:姫乃たま


女はポルノを読む―女性の性欲とフェミニズム (青弓社ライブラリー)女はポルノを読む―女性の性欲とフェミニズム (青弓社ライブラリー)
読了日:10月07日 著者:守 如子

 


新版 アフォーダンス (岩波科学ライブラリー)新版 アフォーダンス (岩波科学ライブラリー)感想

アフォーダンスの入門書最新版。旧版1994を2015に改訂。/アフォーダンスは旧来の知覚理論(間接知覚説)を刷新するが、それによってロボットのフレーム問題なども解決出来うるので、近年注目されている。という導入から。理論を完成させたギブソンの研究の歩みに寄り添う形で解説していく。/「アフォーダンス」自体はわかりやすいが、その発想に基いて展望される「心理学と生物学と物理学の垣根を取り払って成立する全く新しい科学」=「生態科学」のイメージが難しい。

アフォーダンス自体というよりも、アフォーダンスと周辺の科学との関係がいまひとつわからない。知覚理論との対立点はわかりやすいが。

他の諸書を読みつつ。/一章はギブソンの履歴、二章はギブソン一冊目の著作での研究の解説、三~五章はギブソンがニ・三冊めで完成した理論の解説。六章はその後の発展について、という構成と理解していいのかな。/「水はアフォーダンスである」というような表現が一部あり、「アフォーダンス」=「環境の提供する価値」という定義と合わない部分がある。/アフォーダンスが組み合わせである、というあたりに関して説明が不足している。かなり重要なポイントだと思うのだが。
読了日:10月10日 著者:佐々木 正人


ギブソン心理学の核心ギブソン心理学の核心感想

思想家としてのギブソン。エピローグから読むと本のスタンスがわかりやすい。ギブソンアフォーダンス理論に辿り着いた1920~60年代のアメリカの知覚心理学がどんなだったか、とギブソンの理論の解説。/細かい理論や実験の理解が追い付かないが、時代の雰囲気はなんとなく分かるかといった感じ。/ギブソンの理論を含めて、現象学的手法による研究は”説明”ではなく”記述”であり、そこにこそ積極的な意味があるという指摘がある。少なくとも、これを踏まえるとアフォーダンスに関してはかなり理解がすすむ。

この時代の知覚心理学者の背景(素養)には機能主義・プラグマティズム・経験主義的科学論がある。そこにヨーロッパからのゲシュタルト心理学と精神物理学が入り、その受容・消化の過程にアフォーダンスの理論がある。同時代の知覚研究者としてミショット(ベルギー)、ヨハンソン(スウェーデン)、ヘルソン(アメリカ)がいて、ギブソンはいずれとも交流があるし、理論にも関係がある。決してアフォーダンス理論は時代精神から独立したものではない。

著者代表の境敦史さんは古崎敬(ギブソンの著書を最初に翻訳した人)のお弟子さん。この本はロンバードのギブソン研究に拠っている部分も多いようだが、そちらの訳は古崎・境・河野でやっている。いずれも慶応の人。このあたりと佐々木正人さんとの関係がいまひとつよくわからない。
読了日:10月13日 著者:境 敦史,小松 英海,曽我 重司


意識は実在しない 心・知覚・自由 (講談社選書メチエ)意識は実在しない 心・知覚・自由 (講談社選書メチエ)感想

ギブソン生態学的アプローチに軸をおいた、拡張した心の理論。アフォーダンスの概念でもって知覚・自由・社会・言語などを捉える。/さまざまな領域の研究・知見の紹介とその統合といった感じ。アクターネットワーク、当事者研究、生命記号論など気になる分野が多々。

人間性、あるいは、人間らしさを、個体の中に探すことはできない。私たちが人間的であるのは、人間的な環境に住んでいることに大きく依存している。」心のはたらきが環境との関係性によっているのだから当然の主張にもなるのだろう。この部分を捉えると儒教的な風俗論なんかと交差するポイントもありそうだ。というのは完全に脱線する読み方だが。

下方因果(システム因果)という考え方ははじめて知ったが、非常に使い勝手の良さそうなものだ。
読了日:10月15日 著者:河野 哲也


心をめぐるパラダイム 人工知能はいかに可能か (放送大学叢書)心をめぐるパラダイム 人工知能はいかに可能か (放送大学叢書)感想

放送大学テキストの再版。心理学史。ざっと読む。認知心理が今の心理学の中心になるにいたる流れをとりあえずつかめるか。日本の戦前の心理学史が(やや全体からすると脱線気味だが)まとめられているのもよい。/アリストテレス的な「心=白紙説」(心は獲得形成される)とデカルト的な心身二元論(身体は機械、心は生得的)・ないしホッブズ的な心身一元論(心身共に機械)との対立が一つの軸。もちろん後者が心理学の中心。だが、近年になってドレイファスなどによって前者が復活したともみえるが。。。とのこと。

ラテン語のpsychologia定着にはヴォルフが大きな役割を果たしたという。理論面でヴォルフが重要なわけでもないようだし、中国思想は、さすがに関係ない、か・・・?

知覚心理関係ではゲシュタルト心理学がちらっと顔をだすだけ。ギブソンの名はない。/精神物理学というのは実験心理学の直前に位置するもの。
読了日:10月15日 著者:西川 泰夫


夜を乗り越える(小学館よしもと新書)夜を乗り越える(小学館よしもと新書)感想

前半と最後以外は飛ばし読み。文学との出会い方には単純に感動する。自分の家にはさほどその手の文化資本がなかった少年が、中学の教科書で芥川に出会い、友人(の母)から借りて太宰に出会う。しかし、彼の十数歳下の世代となると、この出会い方とはまた違うものがあるんだろうなと思う。青空文庫だとか読書メーターも。そういう意味でも「前時代の最後方」だったりもするのか。/タイトルとても良いと思ったら、『何もかも憂鬱な夜に』へのオマージュだったか。/文体は少々くどいくらいに易しい語り。広く読まれると良いなと。
読了日:10月15日 著者:又吉 直樹


「思想」の現在形―複雑系・電脳空間・アフォーダンス (講談社選書メチエ)「思想」の現在形―複雑系・電脳空間・アフォーダンス (講談社選書メチエ)感想

97年の著作。吉岡さんが話しているのは聞いたことがあるが、本を読むのは初。/現在起こっている様々な変化とそこにある連続性を言語を軸にしつつ考察する。言語の本質(主観的・反省的・〈外部〉性)が露呈してくる過程としての、テクノロジーの発展・複雑系ポストモダン

西洋近代思想のゲームルールとしての判断に関しての相対主義・解釈学的立場の対立。その問題圏から抜け出して(〈脱構築〉して)、判断を環境の側から考えるのがアフォーダンスアフォーダンスは環境一元論の簡潔な表現。ウィトゲンシュタインの「家族的類似性」に近い。/また、それは「判断の反射作用と呼ばれる事態が、客観的・実在論的な仕方で投影されたもの」。/言語は不変項を抽出して固定するもので、それによって自己意識(「その生物であるということはそのようにあることであるようなその何か」)を発生させる。

どんな変化が起ころうとそれは堕落でも革命でもないただの変化だ、状況が如何に変化しようともそれに合った知なり思想なりが出てくるのであって、危機にあるのはあくまで旧来の知の形にすぎない。という信頼が底流していると思う。/一章は特に、書物論・読書論・知識人論でもあり、興味深い。/千葉さんの勉強の哲学などに非常に近いものを感じるが。
読了日:10月17日 著者:吉岡 洋


プラグマティズム入門 (ちくま新書)プラグマティズム入門 (ちくま新書)感想

ジェイムズの名をちょくちょく聞くもののさっぱりだったので、参考に。「源流のプラグマティズム」としてパース、ジェイムズ、デューイ。以後その継承や批判などで流れを描く。一冊ざっと読んだだけではなんとも。。/ジェイムズとローティの議論に関心をもった。自分の「気質」が相対主義的なのだろうか。
読了日:10月18日 著者:伊藤 邦武


書誌学入門 古典籍を見る・知る・読む書誌学入門 古典籍を見る・知る・読む感想

必要に駆られ。図版も多く、構成もわかりやすい。
読了日:10月27日 著者:堀川貴司


漢詩と日本人 (講談社選書メチエ)漢詩と日本人 (講談社選書メチエ)感想

非常によかった。漱石と子規の漢詩の話からはじめて、阿倍仲麻呂の話、平安時代漢詩と和歌の翻案関係や受容のありさま(紫式部清少納言についても)、室町~の『三体詩』と江戸の『唐詩選』の受容など。漢詩の内容云々をメインとするというよりも、受容史を書物などから描いている。/外国文学を日本がどう受け止め自分たちの文化になしおおせていったのかがわかっておもしろい。

平安時代のところでは、漢詩を題にして和歌をつくったり、和歌を題にして漢詩をつくったりする事例がたくさん出されています。ある種、二次創作的な楽しみ方とでもいうか。一方、江戸時代の『唐詩選』はかなりのベストセラーだったみたいで、かな付版や絵入り版とかいろんな形の関連本が売り出されてたというのも紹介されています。都々逸との関係なんかも。
読了日:10月28日 著者:村上 哲見