diary

読んだ

自分用メモ・ノート

2018年2月の読書と感想

朝鮮思想全史 (ちくま新書)朝鮮思想全史 (ちくま新書)

神話から現代北朝鮮チュチェ思想や韓国のポストモダンまで、朝鮮の政治・思想・宗教・文学についての通史。 /朝鮮思想史の入門書がこれまでなかったから書いたもので、なるべく客観的に叙述したとのこと。そのわりには感情的で熱いコメントも多いが、だからこそ多少の読みやすさがあるという感じ。 「天才的」とか「綺羅星のように」という表現が頻出。客観的冷静に、というよりも全方位、盲目的にはならずに寄り添って好意的に解釈紹介しているというところか。 /原典引用もある。文献も充実。

総論として朝鮮思想史の特徴が書かれている。小倉さんは、純粋性・ハイブリッド性・情報・生命・霊性をいうキーワードを念頭においているという。特に「霊性」については本編でも言及が多い。慶州や嶺南など地域の「霊性」という言い方もされている。地域性と思想の関係は証明される類でもなくどう読むか難しい(長州出身者がどう、というのもある)/小倉さんは自身韓国で学んで、一時期は「ごりごりの朱子学者」になろうともしたとあとがきで書いているが、本書の叙述のアツさも韓国の今の雰囲気を伝える文体でもあろうか、と思う。

日本の思想やそのあり方と対比される部分も多く、示唆に富む。ただし、一国思想史という枠組み自体を問い直す視点は本書にはないか。/朝鮮思想史の特徴として、外部から到来した思想が既存のシステムを全面的に改変する傾向があるとしている。実際その点や思想の純粋性志向などは日本のそれとは随分異なっている印象。高麗の仏教→朝鮮の朱子学
読了日:02月03日 著者:小倉 紀蔵


神話から歴史へ(神話時代 夏王朝)神話から歴史へ(神話時代 夏王朝)

2005年発行。考古学研究をもとに旧石器から殷王朝までを描く。農耕(アワムギと稲)・牧畜の拡散過程や、新石器文化の地域間交流、夏王朝(とされる二里頭文化)を経て殷という初期国家が成立していく流れなどが、ダイナミックに、魅力的に、描き出されている。/二章は中国考古学の流れについて。それ以外の部分でも宮本さん自身の発掘経験談含め考古学の現況について触れられる部分が多く、その辺りも面白い。/各地域の社会の発展を丁寧にみていて、多元的。どの地域について述べているのかを確認しつつ読んでいかないと迷子にはなりそう。

文法的に文章がおかしな部分が結構な頻度であり、そのあたりは若干気になる。文意が分かる程度ではあるものの。。。また、ほとんど同意の文章(言い方や力点を少し変えたり、情報を一単語だけ付け加えたり)を二度三度重ねることが多い。読みやすさを意識しているのかもわからないが、焦点が曖昧になってわかりにくいように思う。/それから、教授の名を挙げる時に「教授」「名誉教授」など肩書を律儀に明記するのはいいけれど、女性研究者についてはほぼ全て肩書抜きの「女史」で通すのはさすがにどうなんだと。

夏王朝にあたる二里頭文化は以前からの地域社会の範囲を超えるものではないので、初期国家とは呼ばない、王権の成立期である、としている。「初期国家」をどう定義するか筆者の考えは明示されていない。/中国通史を論じるには、従来の中央-周辺という枠組みではなく北-南の文化軸という二極構造が重要、と「おわりに」で述べている。農耕の位置づけや「長城地帯」の提起など、この巻については説得力がある。/黄河中流域が周辺地域の文化・祭祀を取り入れて王権を形成していく動きはとても面白い。規模が違うが日本の前方後円墳成立と似た構図。
読了日:02月05日 著者:宮本 一夫