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青木美智男「近世後期女性の読書と蔵書について」2015

情報

青木美智男「近世後期女性の読書と蔵書について」(シリーズ〈本の文化史〉1『読書と読者』(横田冬彦編, 平凡社, 2015.5)第七章 所収

https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB18778430

青木さんは2013年に亡くなっておられる。この文は2008/1の 「「書物出版」と社会変容」研究会での報告原稿による。前半は 青木美智男「人情本にみる江戸庶民女性の読書と教養」(歴史評論694,2008-02)と重複するとのこと。

内容

読書から近世庶民女性の意識を探る。ここでの対象は人情本、特に為永春水の「梅暦」シリーズ。さらに近世の庶民女性がどのような本を読んでいたのか、そもそも本を所有していたのか、にも言及。

「梅暦」シリーズには女性読者を意識して工夫した後が多々見られるとして、純愛的な恋愛描写、「意気」の描写、丸く収まる結末、ファッションを描くというタウン誌的な要素、などを指摘。女性が読書をする姿も描かれているとして抜粋している。その読書はすべて貸本であり、音読・黙読の双方がみられる。

蔵書に関しては人情本を離れる。『浮世風呂』『ニコライの見た幕末日本』などに本を買う女性が描写されている他、女訓用の往来物の挿絵のうちに女性の部屋に書棚や書箱が描かれている事例を紹介。これは庶民女性の実態ではないだろうが、そのような夢を見はしただろうとする。
さらに青木さん自身の書籍調査(の失敗)の体験も語られる。元大聖寺御典医草鹿家の女性の蔵書には絵本・読本・合巻が多数あった。(が、 1989当時 には女性の蔵書の重要性を認識していなかったため、男性の書斎の蔵書と混ぜて移動してしまい、その蔵書の内容を正確には再現できない)

所感

最後の逸話の印象が強烈で、これは論文ではなくて報告原稿だからこその生々しさだなと思う。

人情本が女性読者むけの内容になっているというのは非常に興味深く(同時期のヨーロッパなど他の地域だとこの種の書物はあったんだろうか)、やはり読者側の声をなんとかして聞きたいなぁと感じさせるが、史料がないために人情本自体に描かれている女性の姿を参考にするしかないという些かややこしい状態。それでも小声で音読している光景があったりしたのはわかる。
「庶民女性」が一体誰なのかという問題が残されているといえば残されているのか。

なお、編者(横田冬彦)は同書「総論」にて「本章の分析方法と結論は、まさに野間「浮世草子の読者層」の女性読者版」という賛辞を送っている。

2018/4/4