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自分用メモ・ノート

青木美智男「近世後期、読者としての江戸下層社会の女性--式亭三馬『浮世風呂』を素材に」2000

 

内容

幕末~明治に来日した欧米人が注目した女性の識字力と読書。本稿は近世後期の下層社会の女性の読書の質を、式亭三馬の「浮世風呂」を通じて検討する。
前田愛『近代読書の成立』は当時の庶民女性のリテラシイを低く見ているのではないか。

浮世風呂」の第二編「女湯之巻」は「自序」にあるように女性を読者に想定していた。とすれば、二編三編に描かれる女性の世間話に当時の女性の様子が窺えるはず。として、勉強と芸事に追われる娘の会話(母は「無筆」だが厳しい、父はのんびりしている)や、手習所での弁当を母にねだる子から→①教育ブーム。本居信仰の婦人たちの会話から→②伝統文化の学習への関心。丁稚小僧の手習いへの抵抗から→③男女での教育の差(男子には商人職人の世界があって、双方に向かない時は読み書きを学んで別の方向へ)、などを指摘する。

下層社会の女性の知的関心の広まりへの対応として三馬は新たな文芸を模索し、「女湯之巻」を書いた。そしてそれが後に人情本の誕生を促した。

所感

やはり「下層社会」がどんな人々なのかが見えないというのが問題になる。解明しづらい点だが。

指摘される③点目が非常に興味深い。男の子と女の子で受けた教育や、教育の位置づけが異なっているということ。藤野裕子さんのいう近代日本都市大衆の「男らしさ」と繋がりうる論点。また近代の女性の「まじめさ」との関わりでもあろうと思う。(出口なおあたりの家庭での、男女の性格の差などを想像した)

それから単純に、式亭三馬を読んだことがなかったが、非常に興味をそそられた。

情報

青木美智男「近世後期、読者としての江戸下層社会の女性–式亭三馬浮世風呂』を素材に」 ( 歴史評論 (605), 37-54, 2000-09 )
https://ci.nii.ac.jp/naid/40003836168

参考

関連論文に青木美智男「近世後期、下層町人女性の教養と知性--式亭三馬浮世風呂』を素材に」(専修史学 (31), 10-48, 2000-03)

教育ブームについては
青木美智男『大系 日本の歴史11 近代の予兆』(小学館、1989年)

浮世風呂』は早稲田大学の古典籍総合データベースに収録されている。
浮世風呂. 前,2-4編 / 式亭三馬 編 ; 北川美丸 画
刊本は、新日本古典文学大系 86(神保五彌校注,岩波書店,1989)、日本古典文學大系 63(中村通夫校注,岩波書店,1957)

2018/4/4